いよいよ「僕と WordPress のこれまでの歩み」シリーズ、最終回!まだ読んでいない方は、part 1、part 2、part 3 をそれぞれ読んでからこちらの投稿を読んでいただけるといいと思います😊
WordPress の世界を知る
Automattic 社に入社して3年後、2022年6月から、僕はフルタイムコントリビューターとして WordPress プロジェクトに携わるようになりました。その頃から「WordPress は単なるソフトウェア以上のものなのかも」と気づき始めました。WordPress はソフトウェアの名前であり、コミュニティの総称であり、オープンソースや GPL を非常に大事にする思想でもあるんじゃないか、と。
WordPress は今年の5月27日に20周年を迎え、世界のウェブサイトシェアの4割以上を占めています。CMS シェアに限定すると、6割以上を占め、世界でダントツ一位です。非常に多くのユーザーや団体によって利用されている WordPress ですが、これまでの20年の間になんと 112,000 人もの方がその開発・発展に携わってきました!(参照:WPTavern – WordPress Turns 20)
もう一回、その数字を考えてみてください – 11万人以上の人です!ChatGPT に日本の市町村の平均人口を尋ねたところ、2019年時点で 72,573 人とのことでした。つまり、日本の平均的な市町村よりも多い人数が、WordPress に貢献してきたことになります。最初の頃は「既に大勢の方々が携わってきた WordPress… そこに僕は何を加えることができるんだろう?」と圧倒され、悩むことも多々ありました。
オープンソースの特徴
オープンソースは独特なもので、それについても色々と投稿が書けてしまいます。興味がある人は、英語にはなりますが、ぜひこちらのオンラインコースで概要を知ると面白いと思います:Open Source Basics and WordPress
ここではとりあえず、オープンソースの原則を一つ紹介します。
Open Source Principle 2: Scratching a “personal itch”
オープンソースは、一人ひとりが、自分が「かゆい」と思うところを掻くことによって良くなっていく、という原則です。使っていく中で「こういう機能があったらいいなぁ」や「これ、修正したほうが使いやすいなぁ」と思った時に、その人がその部分を変更し、その変更をみんなと共有できれば、みんなの使い勝手が良くなる、といった具合です。他の人が直してくれて初めて、「自分もそこがかゆかったんだ」と気づくこともあるようです。
WordPress プロジェクトに貢献していく時、プログラムコードを書かない貢献についても、これと同じ原則が適応されます。「チームがもっとこう動くといいんじゃないかなぁ」「こんなイベントがあったら楽しそうだなぁ」「これを説明する文書があると助かるなぁ」と思い立った人が、それを実行に移すことで、WordPress のコミュニティーは変化し、より良く成長しています。
それを知った時に、僕が最初感じていたあの圧倒された感じは薄れ、色々やってみることに自信が生まれていきました。
Training Team での1年
僕は WordPress プロジェクトの中でも、特に Training Team で活動しています。このチームは主に、コロナ禍で本格稼働を始めた Learn.WordPress.org サイトを管理し、そのコンテンツを作成します。チーム自体は僕が加わる10年以上前からあったんですが、僕が入った時にちょうど、それまで作成していた教材がようやく脚光を浴びるようになったところでした。10年も続く「伝統」と「いよいよこれから」といった初々しさも同時に感じられる、なかなかユニークなチームです。
僕が入った頃、チームの運営に関する課題がすでにいくつか挙がっていましたが、僕が特に興味を持ったのは、次のようなものでした:
- それまでのノウハウに関するドキュメントが作成されておらず、新しいメンバーがチームに入っても何をすれば良いのか分かりにくかった
- チームはプロジェクトマネジメントツールを Trello から GitHub に移行したばかりだったが、とりあえず内容をインポートしただけで、GitHub をみても何が何だまだかわからない状態だった
- 教材作成は主に英語で行われていて、多言語化する体系が整っていなかった
その時いたメンバーの多くはコンテンツ作成で忙しく、なかなかこういったチーム体制の整理に手が回せていなかった状態でした。僕はこういった事務的な仕事は好きなので、自分でも気になっていた「かゆい」ところから手をつけ、他のメンバーとも協力しながら一つ一つ整えていきました。
WordPress プロジェクトは、チームごとにブログを用意しています。チームによってブログの使い方は多少違いますが、Training Team ではアイディアの話し合いや新しい体制の発表などに使っています。みてみると、僕もこの1年間で 26 の投稿を執筆してきました。その中でも代表的なものをいくつか挙げます:
- Documenting the Successful Launch of Japanese Online Workshops(日本語訳:日本語オンラインワークショップを開催しました!)
- Training Team’s new onboarding program is now live!(Training Team が新しいオンボーディングプログラムを開始しました!)
- Recap: Content Localization Foundations Project(コンテンツ多言語化基盤プロジェクトのまとめ)
- Announcing GitHub updates for Subject Matter Experts and Content Translators(主題専門家とコンテンツ翻訳家に関わる GitHub プロセスの更新の発表)
他にも、今年は Training Team のチーム代表として推薦・選出されました。また2月には個人的に初めての WordCamp となる WordCamp Asia 2023 に参加してきました。春には Sapporo WordPress Meetup グループのオーガナイザーチームに加えていただき、今年はすでに 2回のイベントを開催しました。また1月には Tokyo WordPress Meetup のイベントで Training Team を紹介したり、Create Block Theme プラグインの翻訳に手を加えたり・・・。
とっても充実した1年でした 😊✨
僕と WordPress、これからの歩み
WordPress は20周年を迎えましたが、まだまだこれからも成長していくと思います。
ソフトウェアの発展を見ると、ここ5年ほどはブロックエディタの開発が中心的なテーマでしたが、今年でいよいよそれは集大成を迎えました。次の中心的なテーマは「共同執筆」の機能追加、更にその次は「多言語コンテンツ」を扱える体制の整理です。どちらも僕にとっては待ち遠しい機能で、まだかまだかと、いつも楽しみに待っています。
WordPress のコミュニティーの側面も、一つの転機を迎えました。コロナ禍の影響もあり、従来からのイベントの体制が見直されています。今までのやり方にとらわれない新しい形式が数々考案されていて、今後のイベントの多様性に期待しています。
またコミュニティーは結構安定し、特に日本なんかではその形がしっかり出来上がっている状態です。ただそれを裏返すと、新しい人がコミュニティーに参入することがちょっと難しくなっているかもしれない、という懸念があります。継続的な発展のために、WordPress の将来を担う若い世代をどう迎えていくか、個人のコントリビューターに加えて企業や団体もプロジェクトに迎えていくことができないか、などが検討されています。
そういった課題は、絶対に一人では解決できないと思っています。ただ、一人がアイディアを出したり、また一人が誰か他のアイディアをキャッチしてそれを実現するために動き出したり、「一人」にできることはたくさんあります。
僕も WordPress に貢献する、そういう「一人」になれたらいいなぁと思っています。
本投稿のアイキャッチ画像は、https://www.freepik.com/ai/image-generator を利用し、AI を用いて作成されました。
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